テストは悪くないけど、話せない!
会話の上達は日本語教育にとって一つの課題です。上級試験に合格していて、宿題もしっかりしているのに、なぜかあのおちゃらけた初級の学生より話せない・・・という状況はしばしば起こります。(勉強をそもそも全然しない学生は、ここでの対象じゃありません。)
様々な留学生が増えて、各学校の採用基準もJLPTの取得級ではなく面接でのやり取りをみて判断することが増えています。N1まで合格している学生が、面接が突破できなくていきたい就職先・大学へ行けなかったということもあれば、結構いい加減だけど人当たりはいい学生がなぜかさらっと合格通知をもらうことも・・・。
進学・就職目的でない学生は読み書きは実はできなくてもよくて、会話が上手になりたいだけという人もいます。
話せると日本の生活も不安が減るし、アルバイトも見つかりやすいし、先生以外の日本人と話せたりしたら、やっぱり楽しいですよね。
ということで、そんな重要な会話力を上げる授業のコツと学生へのアドバイスを紹介します。
【授業】基本の口頭練習で、文を極める
N3ぐらいまでの授業は、新しい文型を導入しながら、口頭練習を念入りに練習します。みんなの日本語の口頭練習の進め方についてはこちらで書いています。
導入は絵などを使って、2、3分で済ませ、リピート、変形、導入、拡大など、飽きないようにちょっとずつ変えながら口頭練習します。
教えている側はしゃべりっぱなしで結構しんどいし、「こんなに言わせてばかりで学生はつまらなくないかな、早く応用のプリントとかを使って楽しい練習をしたほうがいいんじゃ・・・」などと思いますが、学生にとっては逆です。むしろ基本の口頭練習をちゃんとしないまま、応用練習しろと言われても、うまくできないし、盛り上がれないです。
応用会話練習は楽しいけど、メインにしない
「会話の練習させよう。じゃあ面白そうな話題を出して学生に意見を聞いてみよう。」とその場で順に意見を言わせたり、討論させたりするやり方もあります。
それでうまく話してくれるクラスだったらかなりラッキーです。(笑)そこでちゃんと日本語だけを使って知的に盛り上がれるのは、その場で意見がすぐ言える能力と積極性があって、ある程度の基礎会話力ができていて、クラス全体の仲とクラスと講師との関係が良くて、クラスの規模がそこまで大きくない場合に限られます。
一見ちゃんと授業が進んでいるように見えても、話しているのは一部の同じ学生ばかりで、ゆっくり思考するタイプの学生やシャイな学生は全然話す機会を与えられないで終わっていることが多いです。その場合話そうとしない学生が悪いのではなく、参加させられない講師側の能力と学校の授業法に原因があります。
よって、私はこのやり方をクラスレッスンでするのは難しいと思います。自由会話より定型文を定着させる口頭練習の方に時間を多めに割くべきだと思います。
ただ、口頭練習だけだとロボットみたいなクラスになってしまうし、よく話せる学生はフラストレーションが溜まると思います。上手な学生を見て刺激を受けることも大切なことなので、部分的に自由な会話をさせる場面は取り入れていいと思います。
自然なスピードでやりとりできるようにする。
基本の文はゆっくり〜だんだん早く話せるように練習しましょう。N4までの文法でも綺麗な発音で自然なスピードで話せると非常にスムーズなやりとりができます。自然なスピードで言えるまで次に進みません。
「会話は練習しなくても大丈夫だから、さっさと試験の勉強をしよう」とする学生もきちんと上記の大切さを説明するとリピートしてくれるようになります。
会話ができる学生はどうやって勉強しているの?
会話が上手な学生にどうやって上手になったのか聞いてみました。学生から「どうやったらいいかわからない」と相談された時の参考にどうぞ。
ブツブツつぶやき法
一人でできる練習方法です。教科書の単語・文型をブツブツ呟きながら練習するだけです。音声が聞けるのなら何度も巻き戻しして聴きながら呟きます。
オタク法
好きなドラマやアニメを何度も何度も見ましょう。2回目以降は字幕はなしで。
一人二役法
会話練習を一人2役でします。これも実際声に出します。教科書の会話部分を暗記してもいいし、ドラマの会話を参考にしてもいいです。強者は自分で状況を想像しながら会話を作っていました。
ネイティブ法
外で出会った日本人と仲良くなって、リアルに生の会話で覚えていくパターンです。波長があう人と友人・恋人になれば会話力は飛躍的にアップします。学校の規則が許すなら先生を食事に誘う方法もあります。
OJT法
日本語を使う会社に就職してしまう方法です。一旦飛び込めば、覚えるしかありません。周りの話し方に耳を澄ませて覚えます。大手日系企業に就職した学生は、「その日本語じゃダメだ」と上司が作文を添削してくれたそうです。学校の中では使う言葉に限界があるし、その会社独自の専門語もあるので、最後の仕上げはここでするしかないです。
会話を楽しもう
会話は続けていれば、上手になるタイミングがやってきます。必ず声に出して、上手な人の発音を聞いて覚えましょう。