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留学生の作文指導法と使用テキスト【採点基準もお教えします。】

留学生の作文指導、いきなり担当になって戸惑っていませんか。

海外で教えていた頃は、学生が書いた作文を楽しみながら採点していました。ネイティブよりもユーモアのある文で笑わせてくれる学生もいれば、翻訳機能を使ったのが丸分かりの謎作文を出す学生もいて。一人では解けない文は同僚と相談しながら解読したり・・・・。でも学生が一生懸命書いた内容はどれも個性的で面白かったです。感覚としては生徒の夏休みの作文を眺めている感じ・・・でしょうか。

一方国内の教育機関だと、受験を意識した指導をしなければなりません。自分も忘れている原稿用紙の使い方、句読点の打ち方、数字の書き方、起承転結でかく、自分の意見がわかるように書くなど、真面目に教えなければならないことがたくさんあります。最初はこんな自分が指導なんてできるのかと不安でした。

数年指導を担当して、徐々にこんな感じでいいのかなあというやり方の軸が出てきたので、そのやり方を紹介します。また採点基準についてもお教えします。

原稿用紙の使い方

まず、こちらの指導から始めます。横書きの場合の基本のルールは、

  • タイトルはマス目4つ分程度開けて書く。
  • 名前はタイトルの次の行に書く。苗字と名前の間は1マス開ける。一番右のマスだけ開けて、右に寄せて書く。
  • 段落の初めは1マス開ける。数字は二桁までは同じマスに書く。
  • 句読点は1マス使う。ただし文末に来る場合は次の行の先頭ではなく、前の文の最後に入れ込む。
  • 句読点は文の途中で意味を区切る時に使う。
  • カギカッコは1マス使う。

まずは上記のルールになれることです。一つ一つ説明して、いい例と悪い例を出してどちらが正解か当てるクイズをして確認します。

このルールは一回では覚えられないので、実際に文を書きながら修正していきます。

文体について説明する。「だ・である体」が基本。

初級でもみんなの日本語20課あたりで、「日記の時は普通体で書きましょう」と指導しているかと思います。加えてレポートや研究計画書では「である」という形も使われることに注意します。

「学生/学生である」の違いを説明するのはこの時点では必要ないので、ほぼ同じだと言っていいです。そしてこの文体は一般的に混ぜて使われています。

「〜だ。〜だ。〜だ。/〜である。/〜である。/〜である。」と繰り返すのではなく、「〜だ。〜である。〜だ。」と混ぜて使うのが良いと指導します。

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他にも連用中止形について、「は」と「が」の使い分けについて、強調構文の復習、指示詞の復習など教えることが結構あります。こちらは教科書の説明の方がわかりやすいので、割愛します。

作文指導でおすすめの教科書はこちらです。難しめですが、説明が細かく、指導しやすいです。

書かせる前のディスカッションでヒント出しをする。

ルールを説明しおわったし、「じゃあ書いてください」と言いたいところですが、普通の学生はまず書けません。よって、こちらからたくさんヒントを準備しておく必要があります。

例えば「日本に来て驚いたこと」というエッセイを書かせるとします。

  1. まずはクラスでディスカッションさせ、学生から出てきた語彙をたくさん板書する。
  2. では自分たちの国ではどう違うのか、という意見も聞いてみて、いい文が出てきたら板書します。

とにかく書く時にヒントになる言葉と文をたくさん出しておきます。この時間はたっぷりとって構いません。


電子辞書を使いながら、下書きを書いていきます。

板書は残したまま、文を書かせていきます。板書した語彙を見てもいいし、電子辞書も使ってもいいと言っています。

学校によっては、辞書を一切見ないようにと指導しているところもありますが、それで書かせるのは無理だと思います(私は無理でした)。

指定の時間に書きあがった学生はその場で提出。まだの学生は宿題にします。大抵宿題は嫌いなので頑張って時間内に書こうとしてくれます。

添削は間違いだけチェックする。→清書へ

正しい文を書いてあげたい気持ちをこらえて、添削は間違い部分だけチェックしておきます。

経験的に教員が正解を書いてしまうと、それで終了したと思って、内容を覚えようとしてくれません(泣)清書しながら正答を自分で考えさせます。この時間が大切です。

こうやって地道に練習していくと、だんだんと意味がわかる文が書けるようになってきます。

【おまけ】採点者は論文の何を見ている?

採点者が見ているポイントは以下の通りです。

字の綺麗さ:読めないと、採点できません。また最低限の漢字を使っていることが重要です。多少の誤字はあまり問題になりません。

字数:指定した字数に達しているか:あまりに短いと意見も何もありませんよね。かと言って字数稼ぎのために同じ内容を繰り返すのもマイナスです。

内容の一貫性・論理性:AなのかBなのか、一貫性を持たせましょう。意見がわからないのはダメです。最初と最後で内容が違うと大きくマイナスです。一般的な意見でも、しっかり理由をつけて主張できていればとりあえず最低のボーダーは大丈夫です。

意見の鋭さ:鋭い考察ができていると大きく評価が上がります。これは日頃から考える癖があるか、もしくはトピックに関心があるかどうかなども影響してきます。

謎の構文を使っていないか:以前採点をしていた時に、何人かの学生が似たような文を書いていることが問題になりました。詳しくは書けませんが、「Aであることは確かだ。だがBであることも間違いではない。よってAもBも正しいと言える。」といったような文で、AとBには問題文の言葉を丸ごと突っ込んでいただけでした。一見それなりの文に見えますが実際は何も意見がなく、丸暗記した構文を書いているだけです。これ、教えた人、恥ずかしくないの?

誰が教えたのか知りませんが、同じテクを使用している学生が2人以上いるとすぐにバレるのでやめましょう。

作文は楽しいもの!

私は学生時代、作文が好きでした。書いているうちに頭の中の意見がまとまっていく感覚、その意見を人に読んでもらえる面白さがあります。考えたことが内容な題材でも、書いていくうちに思考が深まって、自分でも驚くような意見が出ることもあります。

あとはそれを読んだ人がわかりやすいようにまとめるだけです。

指導は最初は大変ですが、慣れてきたら準備も楽になると思います。作文担当になった先生方、楽しみながら頑張ってください!

 

 

 

Chiyo

日本語研究家、ブロガー、母1歳。 関西出身。神奈川育ち。20歳の夏カンボジアで出会った日本語ペラペラの現地ガイドに衝撃を受け日本語教師の道へ。慶應大学卒業後シンガポール3年半→フィリピン半年→共同通信系(アジア経済)記者→日本語別科助教。 2018.9.13 結婚、セブにて挙式 2019.11.21 女の子出産 お仕事の依頼はブログのお問い合わせフォームからお願いします!

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